NEBUTA BEATデザイナーズノート

くじらだまの渚くじらです。ゲームマーケット2019春に制作したNEBUTA BEAT(ねぶたビート)が、この度幻冬舎からパブリッシャー版として発売されました。ひとえに皆様の応援のおかげだと思います。

今回はNEBUTA BEATがどのようにできていったのか、私の備忘録的な意味もこめて書き綴っていきたいと思います。興味がある方はぜひ読んでいただけると嬉しいです。

思いついたきっかけ

実は構想だけは2018年8月からありました。つまり、最初にゲームマーケットに出展する前です。

発想自体はごくごく普通で、ねぶたの展示を見て、ねぶたのゲームが作れないかなと思っただけです。
お盆だったので、夫である鯨玉0号の実家がある青森に帰っていました。どこで見たのか忘れましたが、車からねぶたの飾りが見えて、「ねぶたのリズムでできるゲームないかなぁ…」と言ったのが最初です。その時の0号は「何言ってんだこいつ」みたいな反応でしたが、よくよく考えてみるとそんなに悪くないかも?という印象でした。

ちょうどその頃、くじらだま第一作目である「CMYK!」が煮詰まっているときで、早く作らないとゲームマーケットに申し込んだものの出すものがないよ!という切羽詰まった状態でした。思いついたが吉日とばかりに車の中でルールを書いて、仲間内でやってもらいました。

 

最初のルールはリズムに合わせてカードをドラフトして横に回し、セットコレクションを作るゲーム。その時のメモが途中まで(?)あったので公開します。長いんでアコーディオンの中に入れておきますね。

初期のねぶたルール(クリックすると開く)

カード構成

絵師 ①,②×4色=8枚
演奏者 ①,②×4色=8枚、 ③×4色×2枚=8枚
ハネト ①,②×4色=8枚、 ③,④×4色×2枚=16枚

準備

カードをすべてシャッフルして1人3枚ずつカードを配り、手札とします。残りを裏向きで同じ枚数配り、それをそれぞれのプレイヤー山札とします。プレイヤーがカードを引く場合は自分の山札からカードを引きます。残った端数のカードはゲームから除外します。(今回は使用しません)

リードプレイヤーを決めます。ねぶたを1番最近見たプレイヤーがリードプレイヤーです。リードプレイヤーは掛け声のみに関係します。

カードの動き

「①ラッセーラ、ラッセーラ、②ラッセラッセ、ラッセーラ、③ラッセーラ、ラッセーラ、④ラッセラッセ、ラッセーラ」のリズムで以下の行動を全員同時に行います。①~④までを1ターンと呼びます。

①ラッセーラ、ラッセーラ
自分の山札から1枚カードを引きます。

②ラッセラッセ、ラッセーラ
自分の場に1枚カードを出します。

③ラッセーラ、ラッセーラ
全ての手札を時計回りに隣のプレイヤーに裏向きで机の上に置いて渡します。渡されたカードを受け取り手札とします。

④ラッセラッセ、ラッセーラ
カードを確認し、次のターンに備えます。

掛け声について

リードプレイヤーが①と③の掛け声を、それ以外のプレイヤーが②と④の掛け声を発声しながらゲームを進行します。リードプレイヤーは1ターンごとに時計回りで移ります。リードプレイヤーが掛け声を行えなかった場合、一旦プレイはストップし、再度失敗したターンを行います。この時、リードプレイヤーは①と②の行動を行えません。

 

……よく携帯のメモで書いたな!

車の中で数時間書いたわりにはルールの体裁をしていることに驚いてますが、セットコレクションの内容まで書いてないところが私ですね。たしか色と模様と数字で得点が決まってたんじゃないかな!よく覚えてないけど!

 

しかしですね、テストプレイしてみたんですが……やってる方はすっっっっごく辛い!とにかく忙しい。カードを取るのでいっぱいいっぱい。見てる方はめっちゃ楽しいけど!

そんなわけで、このルールはお蔵入りになりました。CMYK!の方がうまくまとまってくれたので、初出展はそちらで行くことに。最初は無難な方がいいって0号に言われた

 

このときすでに「ねぶたの掛け声を言いながら何かをする」という骨格は出来上がっていました。そして、そこは最後までブレませんでした。

びっくりすることに、このときにはまだ踊る要素はありませんでした。踊る要素ができたのは、2月頭(?)ぐらいですね。私が「立ってやるのってどうかなぁ」と言ったせいです。何言ってんだこいつ。

 

ゲームマーケット2018秋が終わってから(終わる前も?)、会社にいるときにぼんやりルールを考えては、頭の中で試して捨てて、少しいけそうだと思ったら書き出してテストして……を繰り返しました。このゲームの難しいところは、ゲームそのものの難易度は高くなくても、掛け声と動きをつけると途端に難易度が高くなるというところ。ここだけはどうしても脳内で処理しきれなくて、やってみるものの、毎回とにかく難易度を落とせ、落とせと言われ続けました。

最終的に10個ぐらい作りましたかね。真ん中に台置いて回すことを考えたり、バーストゲーにしてみたり、坊主めくりしてみたり……「ラッセーラ」って言いながらやるゲームを一番多く考えた人だと自負しています。みんなもやってみるといい。

試案1

比較的最初の方に作ったもの。絵師、演奏者、ハネトの要素があった。

試案2

1月くらいにテストプレイしたもの。バーストゲー。さらにここに踊る要素が追加された。
ちなみに使用している「いらすとや」の絵はハネトではない。

試案3

ルールがほぼ固まった後の試案。視認性が非常に悪いため、ここからどう要素を見せるかに時間を割くことになる。

 

面白さの核

アクションゲームの面白いところはどこなのか?アクションそのものに対する面白さもあるのですが、ただ動くだけではボードゲームでもなんでもなく、どこかに思考が挟まると思うんですね。

アクションにもいくつか種類がありますが、今回の場合、面白さの鍵としたのが「予想外の動き」です。参考にしたのは「おばけキャッチ」と「エキサイティンモチツキ」。

おばけキャッチなら、通常はカードに「ないもの」を取らないといけませんが、色と形が一致しているものがある場合は「あるもの」を取らないといけません。エキサイティンモチツキでは特定の絵柄が出たときに、通常の餅つき動作ではなく素早く手を置かなければなりません。

このように、通常のルールとは違う動きをするときに、脳はバグを起こします。これが「あ゛ー!!」という絶叫とともに盛り上がる要素になると考えました。

 

……とここまでは順調に定義できたのですが、肝心の具体的アクションまではなかなか決まらなかったんですね。

踊るルールを入れた最初の段階では、出したカードの合計値が条件を超えないように出していくルールでした。しかーし、この「予想外の動き」が踊ることそのもので、あるカードが出たらねぶたの踊りをするというものだったんですが、そもそも人は全然違う2つの動作をできないみたいなんですね。計算と踊りと掛け声は同時にやることはできないということは、これからゲームを作る人は覚えておいた方がいいと思います。無理!!

よく考えたらどのゲームも基礎の動きと予想外の動きで、違う動きはしてないんですよね。取るんだったら取る、手を置くんだったら置く。カウンティングと手を置く動作を同時にやったりはしない。あと記憶とアクションは相性が悪い。当然の結果だったわ。

そんなこんなで0号の友人たちにテストプレイをしてもらったときに、「もっと踊ることにフォーカスした方がいい」とアドバイスをもらいまして、その場で改良。現在の形に落ち着きました。このとき協力してくれたヨシダ氏さだ氏、0号の弟には感謝してもしきれません。彼らの力がなければこのゲームは生まれなかったでしょう。本当にありがとうございます……!

 

まとめると、

  • ハネトカード(白)が出たときは、担当模様の人が踊る
  • カラスハネトカード(黒)が出たときは、担当模様以外の人が踊る

ここまでは通常の処理でいけるところ。軸が模様とハネト・カラスハネトの2軸ですね。

  • 赤、緑、紫が続いたら、全員が踊る

ここが脳バグりポイント。3軸目になります。これを一番最初に判断しないといけません。

3軸目を色にしたのは、重ねる関係上、多少見えにくくても判断がつくようにです。模様だと、上に乗っかってたら分からないですからね。

書いてみると意外と構造は単純なので、慣れてくるとほとんど間違えずにできるようになります。そんな熟練者のために、幻冬舎版では上級者ルールも用意してますので、慣れてきたらどうぞ。最高にエキサイティングできますよ(゚∀゚)

 

宣伝について

今回はプロモーションのしかたを「CMYK!」のときとガラッと変えました。なにせ「踊るゲーム」といってホントに踊るとは思ってもらえないからです。

……普通思わないよね。

まぁそれもありますが、ターゲット層がCMYK!のときとは全然違ったので、変えてやる必要がありました。今回のメインターゲットはYouTuberとか祭り好きな人とか。やっているうちに段々ハイになってくるゲームですし、誰かがやってると人が寄ってくるゲームでもあります。今回のゲームは写真だけでは、ちっっっっとも面白さの核が伝わらないゲームだったので、試遊会と動画で攻めることにしました。

ゲムマ2019春の時にCMYK!の第2版も作っていて、そちらも売る必要があったのですが、傾向が全然違いすぎて諦めた。中途半端になるくらいなら切り捨てた方がよいと思っています。

 

宣伝で必ずやりたかったことがありまして、

この2点。

 

タニクラの3人に頼みたいと思ったきっかけは、ゲムマ2018秋後の酔っ払って「エキサイティンモチツキ」をやってる動画。これはやべぇ人たちだな!と、その時会ったこともなかったのに思ったのでした。その後2019年1月に初対面したのですが、やっぱりやべぇ人たちだった(褒めてる)

ルールが固まってから初めて公に出したのが↓のtwitter動画だったのですが

これに引用リツイートで食いついて来てくれたので、速攻で捕まえに行きましたw いつ頼みに行こうかと思ってたところだったので、興味持ってくれて助かったー!

こうしてできた動画がこれ↓

クオリティ高くないですか!?まさかこんなレベルの高いものを作ってくれるとは。まったく公にせず裏でこっそり進めてたので、いきなりドンと動画投稿されたときの反応はすごかったです。準備してるの最高に楽しかった(´ε` ) タニクラさんは大変だったと思うけどね……!ありがとね!!

この動画は後におかんさんの英訳がついてBGGにリンクが貼られ、海外デビューすることとなりました。

 

もうひとつ、翔さんにやってもらいたかったのは単純に、失敗して頭を抱えるのを見たかった初出展のときに大変お世話になったので、ぜひ新作も楽しんでもらいたかったという理由です。彼は物事を楽しむことにおいて抜群のセンスを持っていると思っているので、絶対やって欲しかった!どこかでやってもらいたいと翔さんに伝えたところ、ちょうどイベントをしたいタイミングとのこと。これによりゲムマ春前の18・19会が開催されることになったのでした。

翔さんが叫んでるので計画通りです( ^ν^)

 

と、ここまでは計画的にできた話。

 

予想外だったのがフォアシュピール。大型試遊イベントですが、フォアシュピール自体がこのとき初めてのイベントだったので、どこまで回るか心配だったのですが、結果は大盛況。上記の翔さんのツイートがフォアシュピール直前だったこともあって、「Twitterで見た!」って言ってくれる人が結構いました。あとは控室に声が響いてたらしく……スタッフの人が次々やってきましたねw うちの試遊だけスタッフ率がすごい高かった。うるさくて申し訳ない。

一度やってみるとハマるのですが、最初の取っ掛かりが難しい(恥ずかしさなどで)ゲームなので、スタッフの呼び込みにも助けられました。強制的にやらせてハマらせるスタイル。麻薬かよ。

あと隣の卓だったU.I gamesさんにも大変盛り上げていただきましたね。その縁あって、2019秋のフォアシュピールには一緒に出ることになりました。

面白いのが、みんな間違えたときに膝から崩れ落ちるんですよ。おんなじ動きするの。傍から見てても笑える卓でしたね。

 

その後、久遠さんの協力によりプロセニアムさんに持ち込んでもらい、pika☆kikaさんに動画を撮ってもらいました。

 


ちょうどゲネプロの日だったみたいで、劇の衣装のままやってますw 汗かきそう……w

すごいハマってくれたようで、その後もエアねぶた(?)をやってくれたりしました。

こうやって書き出してみると、本当にいろんな人に繋いでもらったバトンですね。ありがたい限りです。

出版について

2019年11月に幻冬舎版の発売をさせていただきました。そのときの話を少しだけ。別にインタビューしたわけではないので私の想像も入っていますが、話せる範囲で。

きっかけ

実は幻冬舎さんからは、当日にお声がけいただいておりました。その理由が「試遊風景が異様だったから」(意訳)

 

ですよねぇぇぇぇぇ!!!/(^o^)\

 

でも試遊をしている我々がすごく楽しそうだったと。購入した後にもう一度ブースにいらっしゃって、名刺をいただきました。そういうのが伝わってよかったなぁ……楽しそうにやるって大事!!売り子してるときも隙あらば踊ってたし、ラッセーラ言ってたもんね。

 

その後本当にすぐにメールをいただいたんです。いただいたんですが……

迷惑メールに入っていてね……1週間放置するという失態をですね……なんでこんなときに限って仕事するんじゃああああ!(´;ω;`)その節は大変ご迷惑おかけいたしました!!!

 

あの時若干ゲムマの後処理で修羅場ってた(主に丁合)ので、さすがに迷惑メールまではチェックできてなかったのです。うかつだったわ。(言い訳)

 

あらためて連絡をいただき、その時前のメールに気づきごめんなさいして、お打ち合わせさせていただきました。

 

ターゲット層

幻冬舎さんの会社紹介をしてもらったときにも感じたのですが、ボードゲームが知育系の中に入っているんですよね。将棋とかドリルとか。つまりターゲットが小さい子向き(も含まれる)。ゲームマーケットに来る層とは全然違うんですよね。まぁカタログの中でボードゲームだけちょっと異質な感じではあるので、もうちょっと幅は広いような気はするのですが、売り場的なところも含めてざっくり分けると知育かなーという印象です。ロフト、ハンズ、ドンキを除く。(そもそも他の知育系はない)

 

で、あらためて、NEBUTA BEATについて考えてみると。

……このゲームをやるときに一番のネックになるところが「場所」なんですよね。うるさい、跳ねる。

ボリュームゾーンであろう20代の人は集合住宅暮らしの人が多いので、なかなかやるのが難しいんですよね。実際「場所が…」という理由で購入を見送った人は何人もいました。ボードゲームカフェもしかり。一時期Twitter上で #NEBUTABEAT可 というタグができたくらいなので、普通はダメでしょう。周りに迷惑になりますしw

その場所問題を解決するひとつの選択肢が「学童」です。(もうひとつは大学のサークル棟)

家(一軒家)というのも考えられますが、家だと大人の目がありますからね。子ども達は大人がやろうって言ったって、大人の見ている前ではやらんのです。このゲーム、特に子どもは最初は声を出す恥ずかしさが先に来てしまいますからね。やれば一気にノリノリになれるんですが。

「○○がやってるから」で伝搬しやすいのが小学生。走りたい盛りの子たちをまとめておける上に頭も使える、学童にぴったり!

 

……と考えたときに、意外と子供ターゲットは合ってるのでは?と思った次第です。結構悩んだのですけど、ゲーマー層にはNEBUTA BEATの時点である程度訴求できたのではないかなと。ならプレイヤーの幅を広げるためにもいいのではと思いました。

 

NEBUTA BEATとの比較

まず、プレイ人数が1人増えました。それによってカード枚数が10枚増えています。少ない人数でやるときはちょっと除くのがめんどくさいかもですが、人数幅が出たということでご了承ください。

カードの比較。ハネトがポップになりましたね。微妙に背景とハネトの色が変わったので、模様が見やすくなりました。6人対応になったことで、模様も1種類増えてます。というか他5つも一緒ではないです。

 

裏面はこんな感じ。最初はもともとのカードに近いデザインだったのですが、パッケージに寄せてもらいました。

 

元の箱と比べるとだいぶ大きくなりましたね。

箱のデザインでとにかくずっとお願いしていたのは、カラフルにして欲しいということ。なぜなら、元々のパッケージがすごい探しにくかったから!!箱の小ささもあるんですが、戦利品報告でとにかく目立たない!戦利品報告で目立たないということは売り場でも目立たない!

目に入ってくるということは、とても大切なことだと思っています。認識させるという意味で。人の記憶というのは曖昧なもので、気づくと存在をすぐ忘れちゃうんですけど、何回も見ているうちに、ふと欲しくなる瞬間ってのもあるんですよねー。

 

 

他の変更点として、追加ルールを入れました。回転ルールとエクストリームルールです。より場所を選ぶルールとなっておりますw

ちなみにエクストリームルールは一応2人から対応可能となっています。初プレイには絶対オススメしないですが。なのでパッケージの表記も3-6人です。

 

色弱対応について

色弱対応についてはねー……難しかったですね……。意見はもらっていたし、対応したいと伝えてはいたものの、3色ある上、白黒での錯視もあるし、明度を上げてしまうと今度は模様が見えにくくなってしまって。

データ上での見え方ですが、真ん中がP型、右がD型。はい、無理ですよね!ほんと申し訳ない!

一応ハネトの形が違いますけど、カード上に乗っちゃうので見えないですしね……人によっては赤と紫が区別つきにくいという話もあるので、私の方でやるのは無理と思ってぶん投げました_(:3」∠)_

 

終わりに

NEBUTA BEATについて「どうやって作ったんですか?」と聞かれることがよくあるので、少しでも伝わればいいなーと思いまとめたのですが、わりと普通なのでたいして面白いこともないし参考にもならないしで、完全に自己満です!

でも、NEBUTA BEAT自体はいまだに色んな人に贔屓にしていただいて、お陰様でこうやって市場に出回ることができたので、本当に幸せな道を歩んだゲームだなーと思います。ありがとうございます。今後とも引き続き遊んでいただければ幸いです。

また、この記事を読んでなるほど気になるって思った方は、ぜひ手にとっていただけると嬉しいです。(いるのか……?)